「この飛行機に、お医者様はいらっしゃいませんか?」
フライト中、こんなアナウンスを聞いたことはありませんか?もしある方は、貴重な体験をされたことになります。
飛行中の機内で急病人が発生した場合、地上と違ってすぐに救急車を呼んで病院に搬送することができません。飛行機が着陸するまで、機内にある限られた資源のみで対処しなければなりません。
CAは救急看護の講習を毎年受講していますが、救急隊員のような救命のプロではありません。CAが機内で出来ることには限界があります。
重篤な急病人が発生した場合、私達には「可能な限り容体の悪化を食い止め、地上の救急隊員に引き継ぐ」ことしかできません。
元看護師のCAもいますが常に乗務している訳ではありませんし、機内に搭載されている治療用キットは基本的には医師の方しか使えません。
なので私達は機内で急病人が発生した場合、お医者様の助力を求める事があります。
それがドクター・コールです。
今回は現役CAの個人的視点で「なぜドクター・コールを行うのか?」その理由を書いてみました。
Contents
理由① 医師による治療
重篤な急病人が発生した場合、お客様の命の関わるため一刻も早く処置が必要です。
上記の通り、CAは救命のプロではありません。急を要する場合はやはりプロである医師の力が必要です。
なので可能であれば、機内搭載の治療用キットを使用して医師の方が直接治療を行うことが、急病人の生存率を高める上で最も効果的です。
しかし機内には、治療用ベッドはもちろん、点滴を固定する器具もありません。看護師もおらず、治療用器具も限られています。
さらに機内での医師の医療行為は、状況によっては医師の責任問題に発展する可能性がある法的リスクがあります。そのため、直接的な治療を拒否する医師の方もいます。
これは実際にドクターコールに遭遇した現役医師の方が書かれた記事です。非常に興味深い内容です。
法的リスクがある以上、医師が機内での治療を拒むことは仕方がない事だと思います。
しかし、CAが医師の助力を求める理由は「直接的な治療を行って欲しい」だけではないのです!
理由② 医師の「情報」が急病人の生存率を高める
情報の質
早急な治療が必要だと判断された場合、急病人を医療施設に運ぶため緊急着陸になります。この緊急着陸の実施を決定するのは機長です。
しかし機長はコックピットにいるので、キャビンの様子がわかりません。急病人の状態や想定できる原因、緊急度などは、機長は直接確認する事ができないのです。
そのため、CAが機長に対して、インターホン(機内通話装置)を通じて急病人に関する情報を伝え、機長はその情報を元に今後の運航を判断をします。
この機長判断の質に大きく影響するのは、CAが提供する「情報の質」です。この「情報の質」を少しでも高めるには、医師からの助言が非常に効果的なのです。
医師が直接的な治療を行わなくとも、プロの視点から見た病状や、考えられる原因などを推測してCAに教えて頂くだけでも「情報の質」「判断の質」が向上し、急病人の生存率を高める事に繋がるのです。
24時間機内医療体制サービス「MedLink」
CAからの情報は、機長が急病人の状態を空港の地上スタッフに連絡する際にも役立ちます。
さらにANAは、アメリカにあるMedAire社と契約し、国際線に限り24時間機内医療体制サービス「MedLink」を導入しています。これは機内で急病人が発生した場合、必要に応じて、米国アリゾナ州フェニックスにあるMedAire社と機内より無線などで交信し、急病人の症状に合わせた適切な医療アドバイスを受けることができるサービスです。
この「MedLink」を使用する際にも、急病人の詳しい病状がわかれば、それだけ適切な医療アドバイスを受けることができ、CAによる効果的な応急処置も行えます。
緊急着陸空港の選定
飛行機は空を飛んでいますので、急病人を救急車に乗せるためにも、まずは急いで着陸しなければなりません。
しかしいくら急いでいるからといっても、すぐに最寄りの空港に緊急着陸すればいいかというと、そうでもありません。
最寄りの空港に降りたものの、辺境の地方空港で医療設備が整っておらず、空港周辺に医療施設も無く救急車の要請にも時間がかかる。そんな空港に降りても意味がないのです。
深夜を飛行する便の場合、夜間は閉鎖されている空港も多く選択肢が狭まります。またシベリアのような辺境上空は空港自体が少なく、医療設備の充実した空港も限られています。
上記の「MedLink」では医療アドバイスに加えて医療施設(設備)の整った空港の情報なども提供され、緊急着陸に適した空港を選択することができるようになっています。
「どの空港に降りるべきか?」
その判断にも医師の情報は非常に役立つのです。
最後に。より安全な空のために
LCCの登場によって、空の旅がどんどん身近になってきました。
日本では高齢化が進み、機内での急病人発生率は今後も上がっていくことでしょう。
しかし現行法では「空での医療」にはまだ課題が多いと感じます。
多くの方が、より案内して空を楽しめるようにするためにも、「空での医療」の制度の充実化を強く願っています。
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